深田 上 免田 岡原 須恵

ヨケマン談義11.昔懐かしふるさとの味

11-20.ユノス(柚子)皮の甘煮

 高知県の安芸市あたりでは、柚子をしぼった原液を「ユノス」というらしい。「柚子の酢」であるが「酢」の成分は全く含まれず果樹100%だそうである。しかし、人吉球磨地方では、大きい柚子のことを「ユノス」という。現代の小さい柚子とは別種である。もともと「桃栗三年柿八年、柚子の大馬鹿十八年」と言われるくらい、「ユノス」は実をつけるまでに時間がかかる果樹である。成長が遅いというより晩期大成型なのである。プランターでも着果する市販苗木は接ぎ木したものである。

 球磨地方は、「ユノス」とは柚子のことであるが、これがオヤツなのか、オカズなのか、甘煮であるからおかずにはならず、やはりオヤツであろう。この食べ物については球磨地方出身の多くの方が記憶されていた。筆者も母が元気な頃は毎年作って送ってくれたし、次兄からも送ってもらったことがある。

柚子の皮 皮の甘煮
図1.ユノス(柚子)の皮 図2.ユノスの皮の甘煮

 「あさぎり町旧上村出身で三重県在住の皆越寛子さんが、図2に示すような「ユノスの皮の甘煮」を再現し、試食させていただき、作り方も教えていただいた。作り方はこうである。

 柚子の皮を1センチ幅位に切り(図1)、それを水から煮るのだが、三回ほど茹で汁を変え、苦みをとる。この回数を減らすと苦みが残ってしまうとのことである。
最後の段階で砂糖をいれて加熱し、沸騰したら弱火にしてヘラか杓文字で混ぜながら煮詰めるとできあがりである(図2)。 甘さや辛味は好みで調整すれば家庭の味ができる。

 切り倒されて今はないが、筆者の実家には大きな「ユノス」があって、沢山の実をつけていた。柚子汁も絞った皮も干して保存、活用した。その一つが干したユノス皮の甘煮であり、煮しめの具にもなった。使うときは、干した皮を一昼夜ほど水に浸して戻すのである。干す前に茹でてあるのでアクはほとんど抜けている。母が、ユノスの収穫時期でもないのに、この甘煮を送ってくれたのは、この干しユノス皮であったのだと、今にして思う。

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